奈良・白鳳時代から伝わる越前指物の技術によって作られた箪笥です。ケヤキや桐などを使用し釘を使わないほぞ組み技術で作られています。表面は木目が透けて見えるほど磨き上げられた漆塗りであり、これは越前漆器に通じるものです。金具は分厚く、越前打刃物の技術が使われています。堅牢な作りは三百年持つと言われています。
単に衣類をしまうものではなく、商家の証文や大福帳をしまう金庫として使われたため、鍵がかかり、頑丈で火事の時に運び出すために車輪がついた車箪笥が多く作られました。
2013年には経済産業大臣により数少ない民芸箪笥として伝統工芸品の指定を受けました。美術工芸品としても高く評価されています。
釘を使わないほぞ組み技法
ハート型の抜け型(猪の目)が特徴で、引き出しは鍵がかかります。
雲形 殷時代の竜の文様から派生した吉祥文様。
如意という「願いが叶う」吉兆の前兆という雲をイメージした意匠が取り入れられています。
千三百年の歴史
法隆寺の大宝蔵院に玉虫厨子と並んで国宝の橘夫人厨子が安置してあります。この厨子の台座部分に「越前」の文字が隠されて墨書されていました。制作者である匠が書き入れてたものだと考えられています。 光明皇后の母である橘夫人の念持仏を納めたこの厨子は奈良時代初期の貴重なものであり、8世紀には越前に優れた木工技術があったことを示していると考えられています。 また、平安時代初期には旧武生市の中心地に越前国府が設置されました。ここは、北陸道の要であり、水路と陸路が交わるところでもあったことからこの地方の政治・文化・経済の集約地であり発信地でした。 越前和紙や越前漆器など伝統工芸品の生産地も近くにありますが、これらも優れた木工技術がなければならず、ともに発達してきました。
桐たんすはそれ自体がそれ自体が呼吸し湿度を調整しているため衣類にカビが生えにくく、防虫成分が多いために虫がつきにくいという特徴があります。そのため高価な着物を入れる箪笥として古くから使われてきました。 また、発火点が非常に高いために燃えにくく、火事の時にも外は燃えても中は無事だったいう話が伝わっています。耐火金庫の中は桐で作られていたほどです。 三崎箪笥店の桐は原木で1年、製材して渋抜き乾燥で1年、倉庫でさらに1年以上寝かせ、狂いが収まってから使用します。そのため100年以上使える製品をお届けできるのです。汚れてきたら洗い直して元の姿のようにリフォームすることもできます。 着物の収納だけでなく、様々な用途にも使えるよう、新しい形のタンスも提案しています。