代表インタビュー
はじめに三崎タンス店さんの事業内容を教えてください。
主に下記5点です。
1・伝統的工芸品 越前箪笥、総桐たんす 受注製造販売
2・銘木一枚板テーブル、越前指物など木製品 製造販売及び受注製造販売
3・玩具や雑貨など木製小物 製造販売及び小売販売
4・古い桐たんす等 修繕(洗い直し・削り直し)
5・ベッドやソファ等 一般家具 小売販売
木造2階建と鉄骨3階建ビルに、併せて約300㎡の展示場を有しているので、展示品を見ながら、オーダー家具など打ち合わせもスムーズに行え、材種による木目の違いとか、家具を入れた場合のサイズ感なども体感してもらえます。
その中でも得意とするものはなんですか?
もともと「タンス店」なので、タンス類は得意ですが、銘木一枚板は人気があり力を入れています。都会から観光で来られた目利きの方などが、「品質の良いものなのに、割安ですね。」と言われて、タンスやテーブルをお買い求めいただくことも多々あります。 また、近年のECO志向や、古いものの価値を見直される方も増えてきて、50年前・100年前のおばあちゃん、ひいおばあちゃんが使っていた桐タンスをきれいに直す、というご注文もかなり増えています。
この道にすすまれたきっかけはなんですか?
先祖代々この地でタンス屋をやっていて、父親が7代目だということもあり、小さいころから親戚や周りの人から「跡継ぎ」という扱いをされてきました。なので、大学進学の際は木工に関係しそうな学部ということで、地元の大学の工学部建築学科に入りました。
しかし、父親は「別に継がなくてもいいんだ。」といっていましたし、就職は大阪で全く別業種に就きました。都会である程度の見聞を広げることもでき、憧れていた都会に対するイメージも薄れ、逆に地元の良さ、家業の良さみたいなものが見えるようになってきて、30歳になったのを期に、父親に「うちでやりたい」と談判し、家業を継ぎました。
弊社の展示場には、3代目三崎半三郎が、明治初期に作った越前箪笥を展示しています。こうやって、150年以上経った今でも残るものというのは、そうそうありませんよね。
業務以外で取組まれている活動はありますか?
30歳で帰ってきたときから、青年会議所(JC)や商工会議所青年部(YEG)などの活動をして、今はライオンズクラブに入っています。同じような経営者の集まりで、情報や刺激をもらったり与えたりしながら、アンテナを張るようにしています。
趣味としては、学生のころから旅行が好きで色んなところに行きました。国内では47都道府県のうちあと数県を残してほとんど制覇しています。海外までは、今は忙しくてなかなかいけなくなりましたが、若いころアジアには結構行ったので、韓国・香港・マカオ・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア・ベトネムなど、あとはアメリカ西海岸・ハワイ・フランス・スペインくらいですかね。
国内外問わず、旅先で見る建物や工芸品、出会う人柄、食べ物の嗜好などは、その風土や文化を反映していて、新しい発想や価値観に気づかせてもらえたりします。本当は南米や東欧や北欧などにも行ってみたいですが、なかなか長期の休みが取れないので難しいですね。
今の職業で感じる ”一番の喜び” はなんですか?
やっぱり、家具をお届けしたときにお客様から良かった!というお声を聴いたときですね。
製造商品でも、小売商品でも、修繕家具でもそうなんですが、お店で現物やサンプルを見ても、実際に自分の家に入れてみると想像と違う場合もあります。納入する現場を先に見せていただく場合もありますが、お届けしたときに初めて入ることの方が多いので、「お部屋は何畳間ですか?」とか「床材の色はどんな感じですか?」と、会話の中から情報を頂いて、お客様の想像と実像とのギャップをできるだけ埋めてお話をさせていただき、あとで後悔されないようにと、心がけています。
あるお客様で、蔵の奥の方にしまってあった黒ずんだ桐のタンスが、洗い直しによって真っ白によみがえったのを見て、「びっくり!こんなにきれいになったの?!人目に付くところに置きたいわ。」とおっしゃって頂いて、当初はクローゼットの扉の中にしまう予定を、リビングの見えるところに変更していただいたことがありました。それは、お客様の想像を超えたものを提供できたことがとても嬉しかったですし、こちらも感動しましたね。
今後の夢・目標・チャレンジしたいことなどをひとつ教えてください!
弊社の環境として、越の国(越前・加賀・能登・越中・越後・佐渡の前身)の玄関口として古くから栄え、様々な宗派の寺社仏閣が中心市街地といわれる範囲内に約50社あり、戦国時代の遺跡なども多く残っており、紫式部、いわさきちひろ、かこさとしなどの文人ゆかりの施設もあり、冬には越前カニが食せる民宿・料亭があり、越前箪笥のほかにも越前和紙・越前打刃物・越前焼・越前漆器という伝統工芸産地が15km圏内に集積されています。
この文化遺産や観光資源のおかげで、県内外邦人はもちろんですが、訪日される外国人も増えてきています。
今、チャレンジしたいことは、その外国人に受け入れてもらえるような製品を作りたいと思っています。アジアに、欧米に、もしかするとアフリカや南米などにも、越前箪笥が広まっていってくれれば、と思っています。
最後にタンス町の良いところを教えてください。
このあたりは、7世紀には越の国の玄関口として、8世紀からは越前国の国府として、戦国時代には越前府中城の城下として町を形成してきました。タンス町通りも、城下町として作られた通りなので、敵が攻め入ったときに通りの奥の方まで見渡せないように、少しカーブしています。
その道の両側には、江戸から明治に建てられた趣のある木造の町屋と、羽振りの良かった昭和中頃に建てられた鉄骨や鉄筋コンクリート造の2~3階建ビルが入りまじっています。カーブになった通りを散策すると、タンス店や建具店だけでなく金物屋・タタミ屋・ふとん屋などの看板が上がっているのが見え隠れして、ちょっと雑然とした感じが私は好きですし、また、道幅4m~6m程の狭すぎず広すぎない道路は、散策するのにちょうどいい感じだと思います。地元の人も、朝のジョギングやイヌの散歩コースに使われている方、多いですよ。